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【2024/04/20 19:20 】 |
闇烈火~プロローグ~2―1
追記から闇烈火本編です。
闇烈火~プロローグ『悲しみの果てに』~2―1
※08 1/27 更新、文章修正。

「大丈夫ですか?レンドさん!」
 身体を揺さぶるもぴくりともしなかった。
 倒れている青年の腕に手をやる。脈は少し弱く、目をすばやく走らせ身体中を見渡しても、身体のあちこちから血がどくどくと流れている。
 どう見てもとても危険な状態だった。早急に手当てしないと黄泉の世界へ旅立たせてしまう。

 横たわっている青年を揺らして起こそうとしてたが、まずは傷を手当てする方が先だと気づいてから、はやる気持ちをどうにかして抑えた。それから自身が使える特殊な能力、万物を司る源“エナジー”を駆使して、一つずつ慎重に開いた傷を塞いでいき治療する。

 だが、治療するのが遅かったのか目を疑うような現実を突きつけられた気分に次の瞬間襲われた。なんと青年の唇が徐々に紫色になり、肌も土気色になっているのを視界全体で捕らえたからだ。
 早く手当てしないと青年は二度と起き上がることもなくなってしまう。かといって焦りの心を持ったまま動くと失敗を呼び寄せる危険性があった。
(ドクン、ドクン)
 胸に手を当てる。次第に鼓動が大きく鳴りひびいていき、今にも破裂するのではないかと思うほどだ。落ち着かせようと試みても明らかに動揺しているのは否めない。汗もそれを裏付けるかのごとく生々しく身体を伝う。いつも暑いと感じている汗が、ここときばかりは冷たく感じた。

「レンドさん、レンドさん!しっかりして下さい!お願いです!!」
 喉に痛みが襲い、少しずつ身体がだるさに支配されてく。そして痺れが全身に行くのを肌で感じつつも、それでも一心不乱に持てる力をすべて治癒に当てる。

 他の事など考えられなかった。一刻も早く傷口を治し、出血を塞いで体力を取り戻させることしか考えなかった。
 何故か、それはまだ彼には死なれるわけにはいかないのだ。何故なら彼らは自分にとって初めてできた“仲間”だから。

 幼いころから人と接してはいなく、家族と呼べるのは同じ森に住んでいた動物だけだった。そうした自分と初めて深く接した仲間の一人が彼だ。

 そうして世の中を旅するうちに嬉しいことと同じように、悲しいことも見てきた。そう自分たちはこれまで人の死をいくつも見てきた。
 友の父親が死ぬところも、仲間が半死半生になったところも、そして自分の無力さゆえに傷つけてしまった人もいた。
 その都度、無力がどれほどの苦痛をともなうか、痛いほどに感じ胸が詰まる毎日だったのだ。

――自分に力があれば助けられたかもしれない――もしかしたら悲しませなかったかもしれない――

 そう自分に問いかけてきた。そう考えるたびに、心の海にどろどろした穢れを流し込まれた気持ちになり、身体中から力が抜けていく様をもどかしく思う日々が続いた。
 もうこれ以上、身近な人を失って泣くのはもう嫌だから・・・。だからこそ、彼には生きていてほしいのだ。

――お願いです。どうか死なないで下さい。生きて下さい――

 それこそ藁にもすがりつきたい気持ちに駆られながら、必死に治療を続けるしか道はなかった。彼が無事に目を開けてくれることを祈って…。


 一筋の剣閃が辺りを静かな空間から騒がしい戦場へとたちまち変えていく。血なまぐさい鮮血の匂いが風に乗せられてどこかへ運ぶ。

「ちっ…こいつ、化け物かよ!?斬っても斬っても全然効きやしねぇ!」

 少しでも腕を握り力を入れると容易に折れそうな華奢な身体を持ち合わせた青年。彼はレモン色のスカーフを首に巻きつけている。
 そして獲物は、二本ある剣の柄同士をつなぎ合わせたかのような形状を持ち合わせていた。さらに両端の先端が三叉になっている。
 その矛を巧みに操り、敵の猛攻を掻い潜りつつ隙あらば、敵の急所を貫こうと狙っている。

 対して眼前に立ちふさがるは人の身長ほどある大きな三つ首を有する巨大なる竜。人間が変化…いや”人間だったもの”と言った方が正しい。

 数々の修羅場を潜り抜けてきたであろう猛者。だが、そんな男も、部屋を埋め尽くさんばかりの巨体とそれ以上の威圧感を持つ竜からすればちっぽけな存在にすぎなかった。

 そして竜が両翼を広げると部屋の端から端まで届く大きさにもなった。その翼を広げた時の風は並みの人間なら容易く吹き飛ばされるほどの強風であった。

 獰猛な熊と一匹のアリの如き、圧倒的な力の差。その差を前に物怖じせず、勇敢にも床を蹴って突進するマフラーの青年。

 しかし、個人に十分な武術の腕と魔術の才があろうとも、限度というものがあるからだ。
 戦力の差、腕の差、体格の差は勝敗を決する決定的な一要因にもなりえる。これを覆すのは高度な戦略だけだ。

 これらを一言で表すと“無謀”以外のなにものでもないということ。それでもマフラーの青年はやらねばならなかった。
 戦えるものは青年ただ一人。仲間の一人どころか、高度な戦略なんてもっての他だ。だが、そんな完全に無謀な戦いと言えども、青年には立ち向かうしか選択肢は無いのであった。

「おいおいおい、状況は最悪ってわけか。ついてねぇったらありゃしねー。おまけにモルゥやレンドもとっととお陀仏しちまってるし、まじオレ一人だけかよ」
 左へ右へと決して軽やかなステップとは言えないが、竜が放つ強烈な火炎と襲い掛かる尾撃を交わしていく。そして竜の太い首、巨大な翼、さらに表面にある硬いうろこを斬り払い、突き刺してダメージを与えようとした。
 何でも良い。敵をひるませるだけの傷をヤツに与えれば、それだけで戦況は一変し、こちらが有利になるのだ。
 そして、三つ首の巨大竜が振り回す執拗な尾撃と火炎の合間をぬい、効かないと分かっていながらも、ビシェラトは尚手を休めずに表面を斬りつけようと試み続けた。

「このっ…とっととくたばれってんだよ!」
 しかし、悲しかな先ほどまでに蓄積された疲労と身体のダメージにより、手に力がまったく入らなくなっていた。かろうじて手から落とさないのがやっとのこと。
 それは契約者の身体と同化し身体の力を活性化させ、身体能力と精神力を高める働きを持つ精霊『ジン』を用いた上での現状だ。もしジンが体内と同化していなければ、とうの昔に武器など持てない状態になっていたのは想像するに難くない。
 これでは傷を負わせるのは皆無。その証拠として竜の表面にある鱗を斬りつけるまでには至らず、逆にその隙を突かれた。ビシェラトはスピードが充分についた尾撃をまともに食らって宙に放り込まれたのだ。

 そして固い床に勢いよく叩きつけられるビシェラト。打ち所が悪かったら即死の可能性すらある。幸いとっさに打点をほんのずらしたおかげで即死には至らなかったが、それでも勢いよく叩きつけられたダメージは無くなることを知らない。
 叩きつけられた途端、息が詰まるほどの激痛が背中を介して全身に走った。

「ぐはっ!」
 激痛のあまり、呼吸がほんの一瞬だけ止まったかと錯覚する。続けて次の瞬間、猛烈な息苦しさと吐き気にみまわれた。腹から喉を通して何もかも吐き出したい気持ちに、ビシェラトは思わず顔をしかめるどころか涙を流しそうになった。
 それを何とか堪え、痺れていた手足に力と渇を入れ指令を下す。起き上がれ!と。

 だが状況がますます悪化していることをビシェラトは自覚する羽目になった。なんと矛を握っている感触がないのだ。あまりに力を入れすぎたため、指はおろか手すらも感覚がなくなっていた。
 そして指も手も矛を握ったまま全く動かせない。状況が予想したよりも遥かに切迫しているのは明らか。戦略もない。仲間もいない。しかも魔力も今までの激しい攻防の最中ですべて使い果たしていた。

 どう転んでもこちらに勝ち目はないと言っていい。せめて、水を司るエナジストと風を司るエナジストがいれば、まだ回復と補助で持久戦に持ち込めたのだが、今はそれも不可能というものだった。

「さっさとくたばりやがって。マジありえねぇよ。シャルカ、糞タル、モルゥ。アルク、マラ、リュイカ……」
 いくらぼやいても彼に呼びかけようとも彼らが戦線復帰してくる気配など一向にない。
 それでも、彼らが回復するのを信じて少しでも時間稼ぎをしようと身体に鞭をうつ。次に身体と同化していると思われる精霊(ジン)たちに呼びかけた。

「マイカ! フラウ! カルク! いるんだろ!? 返事しやがれ!!」

――はいはい、起きてますよ――
――何や~?捻くれ坊――
――某はここにいるでやんす。主殿――

 精霊たちにも意思はある。そして契約者との意思疎通を図れる能力も併せ持っていた。
 したがって仲間にするには、各々の精霊たちに自分たちの実力を見せ付けて認めさせる方法が一般的である。それは厳密に言えば契約ではなく従属になるのだが、ビシェラトたちはそれを嫌い、あくまで契約という双方対等な立場においていた。
 ただし精霊たちも一筋縄ではなく、一癖もニ癖もある個性的なヤツらばかりである。当初は手名づけるのに相当苦労した記憶が未だに残っている。その一癖も二癖もある精霊たちにビシェラトはある命令をした。

――それはビシェラトの身体から分離し、自信の力を解放しろというもの。
さして特殊な命令ではない。いつも通りに下し実行しているごく普通の命令だった。

――分かりました。傷つき倒れているものたちに、母なる大地の祝福を与えましょう――
――よっしゃ! ワイは華の香りで傷を治したるわ!――
――ならば某は、主殿の攻撃に合わせて魔物から体力を奪い、それを主殿の癒しに使わせてもらうでやんす――

 当然だが個々で力の差はあり、それに能力も違う。マイカは大地の力を吸い上げて、それを傷つき、倒れている者たちに分け与える能力。フラウはフラウで、華の香りと花びらを空気中に錯乱させ、それを癒しの力としていた。
 さらにカルクは稀に見る特殊な能力の持ち主で、相手の傷からエナジーを吸収、その吸収したエナジーを癒しの力に変えて契約者に注入するというものだった。

 次々と自分の身体から分離し、力を解放していくジンたち。ふと、元々重く感じられた身体が、またさらに重くなった気がした。それに身体のまとわりついていたダルさも一層増し、汗がどっと噴出してくる。そして足も思うように動かなくなっていた。ビシェラトは思わず舌打ちしたい衝動にかられる。

 それはそうだろう。ビシェラトたちは、常日頃ジンたちと同化し身体能力や魔力を高めたまま活動していたからだ。いわばその状態に『慣れ』てしまい、それが当たり前と感じるようになった。
 そこへ身体能力を高めていたジンたちを切り離し、元の能力に戻したらどうなるか?結果は一目瞭然である。身体が重く感じ、思うように動かせなくなるのは自明の理であろう。

 普段の状態ならさして気に掛かるものでもないが、今は疲労困憊でどうにか気力で動いている状態。少しの疲労が何十倍も苦に感じられる。そして時としてそれは致命的になりかねない。正に今がそうだった。

 ビシェラトはますます身体に重くのしかかる疲労に顔をゆがめた。ジンを開放する副作用など予め念頭に置いて承知のうえだった。過去に何度かそういう危機的状況で、ジンたちを解放した経験が何度かあったため、何となく感覚的に覚えていた。だからこそ、予め念頭に入れることができたのであった。
 それでいて尚開放したのは、時間稼ぎと同様に一刻も早く皆が戦線へ復帰するのが優先するべきことだったからだ。

続きます。

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